どれだけ仲の良い親族でも、分配方法によっては、遺産相続時にトラブルが発生することがあります。
特に不動産はお金のように明確な分配が難しいため揉めるケースが少なくありません。
故人のためにもできるだけ気持ちよく分配できることが理想的です。
そこで今回は新しい相続の仕組みとして注目されている家族信託について解説します。
不動産相続における家族信託とは?
家族信託とは遺言に代わる相続制度の仕組みです。
家族の中ですんなりと財産を管理・承継できるようにすることができます。
通常の遺言だと自分の子どもの代にしか相続先を決められません。
しかし家族信託なら孫やひ孫の代まで相続先を指定できます。
これは、家族信託は「委託者」「受託者」「受益者」の3つで成り立っており、親を委託者と受益者、子どもを受託者に指定することが可能だからです。
財産の所有者こそ親ですが、管理や処分などは受託者である子どもが行えます。
不動産相続における家族信託のメリット・デメリットとは?
家族信託のメリットはいくつかありますが、もっとも大きいのが本人の体調や判断能力に左右されることなく財産の管理や処分が可能になることです。
元気なうちなら親に財産管理を任せることができますが、歳をとってくると体力が低下したり認知症の症状が出たりして、管理や判断が正しくできなくことが少なくありません。
しかし家族信託を事前に組んでおけば、親が高齢になって入院したり判断力が低下したりしたときにも、資産凍結することなく自宅を売却できるようになります。
もう一つのメリットは兄弟間などの共有不動産のトラブルを防げることです。
たとえば、父親が亡くなり、残されたものが不動産のみだったとします。
不動産をめぐっての兄弟などの対立を防ぐためにも、契約時に弟を委託者と受益者、兄を受託者に指定し、将来的に兄が親の所有する不動産物件を売却できるようにしておくとよいでしょう。
その際に収益の一部を弟も受け取れるようにしておけば、親の残した不動産は共有でなくなり、兄弟間のトラブルは回避できるはずです。
一方、家族信託は比較的新しい制度であり、専門家がまだ少ないことがデメリットといえます。
将来的に家族信託を考えている場合には、困ったときに相談できる、信頼できる人を親の生前時から探しておくことが望ましいです。