2020年4月に、およそ120年ぶりとなる民法の大きな改正がおこなわれ、不動産売買においても大きな影響を与えています。
この民法改正によって売却する売主側の「瑕疵担保責任」が廃止され、新たに「契約不適合責任」が規定されました。
そこで今回は、新設された「契約不適合責任」とは買主と売主にとってどのような内容なのか、どんな注意点があるかについてご紹介したいと思います。
不動産売却で重要な「契約不適合責任」とは?買主の5つの権利
「契約不適合責任」とは、"購入した物品や不動産などの数量や品質が契約内容と異なるものを売却した場合や、債務不履行の状態と判断される場合について、売主が買主に対して負う責任"のことを言います。
買主が主張できる5つの権利とは
「契約不適合責任」では、買主に5つの権利が認められています。
追完請求
引き渡しのあった物品の内容や品質が契約書の内容と異なる場合に、修繕や代替品など改めて完全な給付を請求できる権利
代金減額請求
追完請求をしても売主が追完を実行しない場合、代金減額請求できる権利です。
催告解除
売主が買主の追完請求または代金減額請求などに応じない場合、買主は期間を定めて催告し、期間内に履行されない場合には契約を解除できる権利です。
無催告解除
契約不適合責任が発覚した場合で"契約の目的を達しないとき"に限り、売主に催告することなく契約を解除できる権利です。
損害賠償
売主に帰責事由がある場合に限り、契約不適合によって発生した損害を売主に請求できる権利です。
売主側は特約によって免責が可能
買主の合意があれば、契約不適合責任を特約によって免責することも可能です。
この場合、特約の内容を漏れがないよう契約書に記載する必要があります。
不動産売却における「契約不適合責任」に関する売主側の注意点とは
「契約不適合責任」では、不動産を売却する際に売主側としてはいくつか注意点があります。
法改正をよく理解している不動産会社を選ぶ
まず、法改正に対応した契約書が作成できる不動産会社を選ぶ必要があります。
契約不適合責任の通知期間を設定する
買主が了承すれば契約不適合責任の通知期間を自由に定めることが可能です。
逆に言うと、設定していなければいつまでも売主が契約不適合の責任を負うことになるので注意が必要です。
代金減額請求権の定めの有無を確認する
売主が個人の場合、買主に代金減額請求権を与えないような契約書となることが一般的であるため、その有無を確認しておくことも注意点のひとつです。
心理的瑕疵や環境的瑕疵は告知書で対応する
売却する不動産に心理的瑕疵や環境的瑕疵がある場合は、告知書で対応するというのも注意点と言えるでしょう。
インスペクションによって物理的瑕疵を把握する
物的瑕疵についてはインスペクション(建物状況調査)を実施し、双方が内容把握することが望ましいとされています。